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半年で評価額7倍 — 中国AIスタートアップ「月之暗面」の異次元スピード

2026.06.27 配信
半年で評価額7倍 — 中国AIスタートアップ「月之暗面」の異次元スピード
画像: 36Kr
参照元: 36Kr

半年前の時点では約43億ドルだった月之暗面(Moonshot AI)の企業価値が、2026年6月には300億ドル(約4.5兆円)にまで膨らんでいる。半年で7倍という数字は、もはや「成長」という言葉では追いつかない。

20億ドルを調達しても「足りない」可能性

36Krの報道によると、月之暗面は新たに20億ドル(約3,000億円)の資金調達ラウンドを進めており、リード投資家には複数の一線級VCが名を連ねている。

驚くのはこの規模の調達でも「足りない」可能性があるという点だ。AI基盤モデルの開発には膨大な計算資源が必要で、NVIDIAのGPUを数万基単位で確保しなければならないため、調達した資金の大半がGPUの購入と運用に消えていく。「金を集めてGPUを買い、モデルを鍛えてまた金を集める」という無限ループを最速で回した者が勝つゲームにおいて、月之暗面のスピードは群を抜いている。

わずか1カ月で月間売上が倍増

月之暗面の月間売上は2026年3月に1億ドルを突破し、中国のAIスタートアップとしては最速の到達だった。ところが翌4月には2億ドルへと倍増しており、わずか1カ月で売上が2倍になるという異常なペースを見せている。

この急成長を支えているのが、同社のAIアシスタント「Kimi」の爆発的な普及だ。中国の大学生やビジネスパーソンの間で文書要約や論文検索、コード生成のツールとしてKimiが急速に浸透しており、日常的に使うユーザーが加速度的に増えている。

オープンソース公開が評価を決定的にした

月之暗面が投資家の評価を決定的に高めたのは、Kimi K2.6のオープンソース公開だ。従来、中国のトップAIモデルには「性能は高いが使えるのは自社サービスだけ」という制約があったのに対し、Kimi K2.6はMITライセンスで公開されたため誰でも自由に利用できる。

ベンチマークではGPT-4クラスの性能を示しており、世界の開発者コミュニティで一気に注目を集めた。Hugging Faceのトレンドランキングでも上位に入るなど、中国発のオープンソースAIとしての存在感を大きく押し上げている。

創業わずか2年で4.5兆円企業に

月之暗面は2023年に清華大学出身の楊植麟(ヤン・ジーリン)が設立した会社で、創業からわずか2年で評価額4.5兆円に達している。日本でいえば楽天やソニーの時価総額に匹敵する規模であり、それをたった2年でAIスタートアップが達成したことになる。

比較対象として、日本のAIスタートアップで最も評価額が高いPreferred Networksは約3,500億円なので、月之暗面はその13倍にあたる。設立年は数年しか変わらないにもかかわらず、これだけの差がついている。

資金・人材・市場の3つが桁違い

中国AIスタートアップの速度を支えているのは、資金と人材と市場の3つだ。中国のVCはAIに年間数百億ドル規模で投資しており、月之暗面が20億ドルを調達できるのはそれだけの資金が市場に流れ込んでいるからにほかならない。

人材面では清華大学や北京大学、中国科学院が世界トップレベルのAI研究者を国内で大量に供給できるうえ、海外で学んだ研究者が帰国する「海亀(ハイグイ)」の流れも加速している。さらに14億人の国内市場がプロダクトの検証と収益化を高速で回す基盤になっており、月間売上が1カ月で2倍になれるのは、この市場の規模と成長速度があればこそだ。

数兆円規模の企業が2年で生まれる世界

月之暗面だけではない。DeepSeekや智譜AI、MiniMaxといった中国のAIスタートアップが複数、数兆円規模の評価額に達している。日本で「ユニコーン企業(評価額10億ドル以上)」が話題になっている間に、中国では「デカコーン(100億ドル以上)」が次々と誕生し、さらにその上を行く企業まで出てきた。

たった2年で国家規模の企業が生まれるという現象は、AI領域の異常さと中国エコシステムの底力を同時に映し出しており、月之暗面の7倍成長はまさにその象徴だろう。