どのAIが「すごい」かは、ベンチマークの点数でいくらでも議論できる。だが、開発者や企業が実際に自分のサービスに組み込んで、毎日どれだけ叩いているか——その利用量という現実の数字は、嘘をつかない。そしてその数字が今、はっきりと中国に傾いている。
9週連続で世界首位、米国は4分の1以下に
世界中のAIモデルへのアクセスを仲介するプラットフォーム「OpenRouter」のデータ(中国・国家ビジネスデイリーが集計)によると、中国のAI大規模モデルは9週連続で世界の利用量トップに立った。
6月22日から28日の1週間で、世界全体のAIモデル呼び出しは合計46.7兆トークンに達した。このうち中国モデルが20.39兆トークンを占め、前週比8.4%増。対する米国モデルは4.25兆トークンまで落ち込み、前週比26.22%の大幅減となっている。
もっと長い時間軸で見ると、変化はさらに鮮明だ。Google・OpenAI・Anthropicという米国勢に向かうトークン要求の割合は、1年前の72%から、2026年6月にはわずか33%にまで崩れ落ちた。1年で半分以下である。
上位を埋める中国モデルの顔ぶれ
個別のモデルで見ると、勢力図はこうなっている。
- 首位はDeepSeek-V4-Flashで、週間4.66兆トークン。これで6週連続のトップだ。
- 2位は小米(Xiaomi)のMiMo-V2.5で4.48兆トークン、前週比14%増と急追している。
- 3位がMiniMax M3の3.74兆トークン。
そして見逃せないのが、智譜AI(Zhipu AI)のGLM-5.2の躍進だ。6月17日にオープンソースとして公開されると、前週比66%増の2.11兆トークンを記録し、一気に7位へ食い込んだ。
このGLM-5.2、ArtificialAnalysisの世界LLM知能指数で51点を獲得し、オープンソースモデルとして最高位につけている。コーディングや長時間かかる作業を得意とし、数時間がかりの大規模な開発プロジェクトを自律的に走らせる力もあるという。
一方で、米国の高級モデルの一角だったClaude Sonnet 4.6が、約4か月ぶりに上位ランキングから姿を消した。プレミアムなモデルにのしかかる競争圧力を物語る出来事だ。
「領収書の数字を写すのにノーベル賞学者はいらない」
なぜ世界はこれほど中国モデルに流れているのか。研究会社ExponentialViewのレポート「2026年AI経済の現状」は、開発者や企業がコスト効率のいい推論を求めて、DeepSeekやGLM、MiniMaxといった中国モデルへ次々と乗り換えていると分析している。
同社の創業者アジーム・アザール氏の言葉が、この流れの本質を突いている。「領収書から数字を抜き出して表計算ソフトに入れるのに、いつもノーベル賞級の頭脳が必要なわけではない」
つまり、最高性能のモデルに高い料金を払い続ける時代は終わりつつある。やりたい仕事に対して「ちょうどいい性能を、安く」選ぶ——市場がそう成熟してきたとき、コストで勝る中国モデルが選ばれていく。技術力の差ではなく、賢い使い分けの結果として、世界のAI地図が静かに塗り替わっている。