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Appleが「中国軍系企業」からメモリを買いたい — RAM高騰で禁断の選択肢に手を伸ばす

2026.06.28 配信
Appleが「中国軍系企業」からメモリを買いたい — RAM高騰で禁断の選択肢に手を伸ばす
画像: The Verge / Getty Images
参照元: The Verge

今週、Appleがほぼ全製品の値上げに踏み切った。iPhone、Mac、iPadと軒並み価格が上がった背景にあるのは、世界的なRAM(メモリ)価格の高騰だ。そしてその値上げの痛みに耐えかねたAppleが、驚くべき相手に手を伸ばしていたことがFinancial Timesの報道で明らかになった。

中国のメモリチップメーカー、CXMT(長キン存儲技術)である。

「軍とつながりのある企業」リストに載る相手

CXMTは、米国防総省が「中国人民解放軍と関係がある」と認定してブラックリストに掲載している企業だ。法律上はAppleがCXMTからチップを購入すること自体は違法ではないものの、中国軍関連企業との取引はレピュテーションリスクが極めて大きい。

しかもCXMTは、米商務省が輸出規制の「エンティティリスト」に追加する候補にも挙がっていた。ホワイトハウスが中国との貿易交渉中だったために追加が保留されているだけで、今後規制対象になる可能性は消えていない。

ティム・クックの綱渡り外交

Appleのティム・クック CEOは、トランプ政権との関係構築に相当な労力を注いできた。大統領に豪華な彫像を贈ったり、メラニア夫人の映画試写会に出席したりと、政権との距離を縮める動きを見せている。CXMTからの調達を認めてもらうための地ならしとも取れるが、仮にホワイトハウスが許可を出した場合でも、政治的な反発は避けられないだろう。

実際、下院中国委員会のジョン・ムーレナー委員長(共和党)はFinancial Timesに対し、「Appleが中国軍系企業と提携することは重大な過ちだ」と明言している。「重要なサプライチェーンで中国共産党の支配計画に加担すれば、米国のテック産業は中国への依存をさらに深めることになる」と警告した。

なぜAppleは「禁断の果実」に手を出すのか

答えはシンプルで、RAM価格が天井知らずに上がっているからだ。AIブームによるデータセンター向けメモリの需要急増が主な要因で、スマートフォンやPC向けのメモリにまで価格波及が起きている。Appleのような巨大な調達量を持つメーカーにとって、メモリ価格の数%の上昇がそのまま数十億ドル規模のコスト増につながる。

サムスンやSKハイニックスといった韓国勢、米国のマイクロンなど「安全な」サプライヤーだけでは供給が追いつかない状況で、CXMTという選択肢が浮上してきたわけだ。

米中半導体摩擦の縮図

この一件は、米中テック対立の構造的な矛盾を浮き彫りにしている。米国政府は中国の半導体産業を封じ込めようとする一方で、米国企業自身が中国製チップなしでは製品コストを抑えられないという現実がある。

AppleがCXMTとの取引許可を得られるかどうかは不透明だが、このニュース自体が「デカップリング(分離)」の難しさを象徴している。世界最大のテック企業であるAppleですら、中国のサプライチェーンから完全に離れることはできないのだ。