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Anthropic最強モデルMythos、米国内100社に解禁 — きっかけは韓国企業への提供だった

2026.06.28 配信
Anthropic最強モデルMythos、米国内100社に解禁 — きっかけは韓国企業への提供だった
画像: WIRED / Getty Images
参照元: WIRED

6月26日、米国商務省のハワード・ルトニック長官がAnthropicに宛てた書簡が明らかになった。内容は、同社の最先端AIモデルMythos 5(ミュトス5)について、米国内の100以上の企業・政府機関への提供を認めるというものだ。

「適切なセーフガードが整備されていると判断した」とルトニック長官は書簡に記している。だが、この部分的な「解禁」に至るまでの2週間は、AI産業にとって前例のない緊張の連続だった。

発端は韓国の通信企業

事の発端は、Anthropicが韓国の通信企業にMythosへのアクセスを提供したことだった。米政府はこの企業に「中国とのつながり」があると判断し、警戒を強めた。同時期に、AmazonとNSA(国家安全保障局)がそれぞれ別の懸念を提起していた。消費者向けモデルFable 5がジェイルブレイク(安全制限の回避)可能であるというものだ。

これらの問題が重なった結果、6月12日の金曜夜、ルトニック長官はAnthropicに輸出管理指令を送付。MythosとFable 5の両モデルについて、米国内の外国籍従業員を含む広範なアクセス制限を課した。Anthropicはこれを受けて、両モデルのアクセスを全面的に停止するという判断を下している。

「政府の青信号」がなければモデルを出せない時代

今回の一件が業界に与えた衝撃は大きい。OpenAIのディーン・ボール(戦略未来チーム責任者、元ホワイトハウスAI顧問)は、Anthropicの事例を受けて「フロンティアAIモデルの開発者は、もはや政府から明確なゴーサインを得なければモデルをリリースできない」と指摘した。

実際、OpenAI自身もGPT-5.6の提供開始をトランプ政権の要請で延期したことを発表しており、AIモデルの公開が政府の承認事項になりつつある現実を裏づけている。

Anthropicの「背水の陣」交渉

アクセス停止の2週間、AnthropicはサイバーセキュリティチームとAI安全チームの幹部をワシントンD.C.に送り込み、商務省との集中交渉を行った。共同創業者でチーフ・コンピュート・オフィサーのトム・ブラウンと、公共政策責任者のサラ・ヘックが交渉の中心を担ったという。

交渉の成果として、Mythos 5は「サイバー防御者やインフラ提供者」を中心とした限定的なグループに再提供が認められた。さらに、承認済み組織は外国籍の従業員にもMythosへのアクセスを許可してよいとされ、当初の指令からは大幅に緩和された形だ。

ただし、消費者向けのFable 5についてはまだ交渉が続いており、週末を挟んでの協議が予定されている。

AIが「輸出管理品目」になる世界

半導体チップの輸出規制はすでに米中対立の主戦場になっているが、今回の一件はAIモデルそのものが輸出管理の対象になりうることを示した。物理的なモノではなくソフトウェアであるAIモデルの「輸出」をどう管理するかは、既存の規制の枠組みでは対応しきれない新しい問題だ。

Anthropicは今年すでに、軍事請負業者によるモデル利用に制限をかけようとしたことでトランプ政権と対立し、訴訟にまで発展している。AIの安全性を重視する企業姿勢と、国家安全保障上の利用を推進したい政権のあいだの摩擦は、今後さらに激しくなるだろう。

韓国企業への提供がきっかけで米国の最先端AIモデルが止まり、その影響がOpenAIにまで波及する。AIモデルの地政学は、半導体に続く米中テック対立の新たな前線になりつつある。