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1日7.5億件の決済を処理するインドUPI — 次の「10億件」をAIで獲りにいく

2026.06.28 配信
1日7.5億件の決済を処理するインドUPI — 次の「10億件」をAIで獲りにいく
画像: TechCrunch
参照元: TechCrunch

インドの街角で屋台のチャイを買う。QRコードをスマホで読み取れば、数秒で支払い完了。この光景を支えているのがUPI(統合決済インターフェース)というインド独自のデジタル決済基盤で、いまや1日あたり7億5,000万件以上の取引を処理している。

そのUPIを運営するNPCI(インド決済公社)のディリップ・アスベCEOが、次の成長フェーズの鍵は「AI」だと明言した。

「次の5億人」にリーチするために

すでに7億5,000万件という途方もない数字を叩き出しているUPIだが、アスベCEOが見据えているのは1日10億件の大台だ。そのために必要なのは、まだデジタル決済を使っていない「次の5億人」を取り込むことだという。

インドは22の公用語と数百の方言を持つ国だ。英語やヒンディー語のインターフェースだけでは、地方の利用者にはハードルが高い。そこでAIを使った多言語音声対応が重要になる。スマホに話しかけるだけで送金や残高確認ができれば、文字入力に慣れていない層にもUPIが届く。

AIが担う4つの役割

アスベCEOが挙げたAIの活用領域は具体的だ。

  • 詐欺検知: 不審なアカウントや取引パターンをリアルタイムで検出する。7億5,000万件を毎日さばく中で、人力での監視には限界がある
  • 多言語・音声対応: インドの言語多様性に対応し、オンボーディング(利用開始)のハードルを下げる
  • 信用スコアリング: デジタル決済の履歴を持つユーザーや加盟店に、AIが与信判断を行って少額融資を提供する
  • 紛争解決: NPCIが開発した言語モデル「FIMI」がすでに100万人以上のユーザーに対して決済トラブルの解決を支援している

PhonePeとGoogle Payの「二強」を崩せるか

UPI市場にはひとつの課題がある。PhonePe(フォンペ)とGoogle Payの2社だけで市場シェアの約80%を占めており、NPCI自身が提供するBHIM UPIアプリのシェアはわずか1%程度にとどまっている。決済インフラは公共財として機能しているのに、そのうえに乗るアプリ層は特定の民間企業に集中しているという、ねじれた構造だ。

アスベCEOはインドの豊富な決済データを活用した「小型の特化型言語モデル」の開発を呼びかけており、インド発のAIフィンテックが立ち上がる土壌はある。14億人の金融行動データは、汎用大規模モデルよりもむしろ、特定の用途に特化した小型モデルにとって宝の山になるかもしれない。

アジアの「決済×AI」最前線

中国のAlipayやWeChat Payがすでにaiを深く組み込んでいるように、インドもまた決済インフラにAIを本格導入しようとしている。違いは、インドのUPIが民間企業ではなく準公的機関のNPCIによって運営されている点だ。公共インフラにAIが組み込まれることで、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)という社会課題にAIが直接貢献する可能性がある。

1日10億件という目標が現実になるかどうかはまだわからないが、14億人の国でお金の流れをAIが変えようとしているという事実は、アジアのAI社会実装のスケールを象徴している。